感情が眠っていた子ども達と大人同士

2023年01月23日

言い出しっぺの精算

父と母が同じ年生まれのおかげで、
長寿の祝いが2人1度に済んできた。
還暦、古希、喜寿、傘寿、それに気づいてお祝いをしようと、
妹に声をかけるのは、いつもほとんど私だったように思う。
2年前に80歳の傘寿のお祝いを終えた時、
次の米寿まで8年あって、しばらく余裕があることにホッとした。
食事会、温泉旅行、記念の贈り物、親族が集い賑やかで、
父と母が喜んでくれるのが、いつも嬉しかった。

77歳のときだったか、記念品にフォトビジョンという、
メールで写真や動画が届く写真立てのようなものを贈った。
離れて暮らす娘達や孫達から、写真が届くのをとても喜んでいた。
言い出しっぺは私だったので、
私が契約している携帯電話の会社で、私が契約した。
月々の使用料は、妹と私が半分ずつ払うことにした。
とりあえず契約更新までの2年分を分けて、
妹が1年分を私に支払った。でもその後、何年経っただろう。
契約更新に気づかず、とうとう5年を過ぎてしまい、
毎月、父と母のフォトビジョンの使用料は、私だけが払っている。
「更新したからまた1年分お願い。」
もちろん私が妹に、そう言えばいいことだったのだけど、
私も私生活が混乱していたし、払うべき妹の方が、
本当は気をつけていて、払う配慮があると良かった。

最近の80歳のときに、これまた言い出しっぺは私で、
Wi-Fiがあるところでだけ繋がるタブレットを贈った。
おかげで母はLINEを覚え、写真も動画も受け取れるようになり、
可愛いひ孫の様子をテレビ電話で見られるようになった。
それでフォトビジョンは利用されなくなった。
どころが厄介なことに、母のLINEアカウントを作るのに、
フォトビジョンの携帯番号を使ったのだった。
母がLINEを楽しむ電話番号の維持のために、
使わないフォトビジョンの契約を切れないでいた。
実は、私はまだ3Gのガラケーを使っている。
2024年1月で3G通信が終了して使えなくなるので、
早めの機種変更を勧めるダイレクトメールが度々届いていた。
父と母のフォトビジョンも3G回線で、同時期に使えなくなる。
その後母のLINEをどう継続するか、考えなければならなかった。

そこに訪れたのがこの年末年始の家族の集いだ。
何も疑ってこなかった家族の形、
父や母や妹を見る私の目が大きく変わった。
・・・というか、私は元夫に対してだけでなく、
それ以前、生まれ育った最初の家族に対しても、
仲のいい家族でいようと気を使い、いつも根回しをしてきたようだ。
誠意だと思ってしてきたことが、父や母や妹との関係を保ち、
信用され、認められると思っていた。
でも、このまま身を尽くしても、そこにはたどり着かない。
便利なやりたがりの家族で終わるだけだと、わかってしまった。

使っていないフォトビジョンを解約して、
せめて今より安く、電話番号さえあればいい契約を探そう。
もう、妹との連帯は望まない。
初めから全部私が支払うつもりで、独断で決めよう。
そう思って調べると、キッズ携帯が割安でよさそうだと思った。
父と母で出かけた先で、二人が連絡を取り合えるのもいい。
早速ショップに出かけて尋ねると、在庫がなかった。
在庫のあるところを探すことにして、家電量販店も巡った。
でもどこへ行っても品切れで、途方に暮れて家に帰った。
ネットで中古品が売っているのを見つけて、
持ち込み契約を調べているうちに、発想が変わった。
必要なのはLINEの継続だけだ。
そもそもLINEをするのに、電話番号なしでは駄目なのか。

遠回りをしたと思う。もっと早く動き出せばよかった。
LINEのアカウントは電話番号がないと作れない。
でも携帯電話の番号である必要はなく、固定電話でもOK。
母のアカウントを、フォトビジョンの番号で作った時、
その電話番号宛に本人確認のSMSが届き、
そこにある番号を入力する必要があった。
それでメール受信ができる番号が前提だと思っていた。
でも、メール受信以外に音声確認という方法があって、
固定電話には音声案内で番号が届くのだそうだ。
実家にはまだ固定電話がある。なんだ、そうだったのか。
一刻も早くアカウントの電話番号を変更し、
フォトビジョンを解約したい!気が急いた。
『連名で贈って折半するって言ったのに、私だけが払っている。
 蔑ろにできるのは、私が言い出したことだからなの?』
私は、私の本音と向き合うのが本当に苦手だ。

車に乗って実家に向かった。
LINE電話を入れたけれど、母は出なかった。
留守なのか気づかないのか。でも私は実家の鍵を持っている。
留守でも入って、LINEの電話番号を変更することは可能だ。
チャイムを鳴らすと母が出た。父は出かけていて留守だった。
母は、離れた部屋にいて着信に気づかなかったと言いながら、
分からないのについて来て、私のすることを見ていた。
LINEアカウントの電話番号変更は、あっという間にできた。
もっと早く調べていれば、フォトビジョンも早く解約できて、
妹へのわだかまりを重ねなくてもよかったのに。
幼い頃、母に課せられた妹を守るという使命のために、
私は妹と、私が尻込み譲ることでしか関係してこられなかった。
私が我慢して損を取って妹を立てれば、母は私に満足した。
だから自分を呑み込んで、私の方が大人だと納得する方が、
私には楽なのだ。
でもそれこそが、本当の関係を作ってこられなかった原因だ。

穏やかな母の顔に、もう年末年始の旅行に私は行かないと、
サラッと言おうかと思ってやめた。
この人の中に、恐ろしい自分の人生への不満が眠っていて、
ある時突然それが吹き出すなんて、結びつかず見ていた。
父も母も旅行から戻って、体調をくずすことはなかったらしい。
安心したけれど、旅行後コロナを発症した妹の二女家族からは、
父と母に何の連絡もなく、体調を問うこともなかったと分かった。

家族というものに、長い間手に入らないものを求めてきた。
1から始める他人のように、理性で見られるようになっても、
対処はさほどこれまでと変わらない。
他人に敬意を払うように、きっと笑ったり話したりできると思う。
でも他人に気を許さないのと同じ、血縁が特別なわけではない。
言い出しっぺのお節介は、自分が救われるためでしかなかった。
仇となって返ってきたことの意味を考えて、精算する。
残ったものだけで、私は生きていけるような気がした。


kuturoguhebitomomi at 10:32│Comments(0)

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